施工注意
安全ネットの構造等に関する安全基準と解説
■構造等基準
①適用
この基準は、建設工事等の場所において、労働者の墜落による危険防止のため、水平に張って使用するネット(以下安全ネットという)について適用する。
(注)落下物による危害を防止するために使用するネットには適用しない。
②定義
この基準に用いる用語は、次のように定義する。
網糸
網地を構成する糸で、単糸又は単糸数本を拠り合せ、もしくは組み合わせたものをいう。
縁網
ネットの辺を形成する網をいう。
仕立糸
網地と縁網を結びつけるための糸をいう。
吊網
ネットを支持点にとりつけるための網をいう。
仕立寸法
静置時のネットの大きさのことであり、正方形のネットにあっては一辺長を、長方形のものにあっては短辺長と長辺長をもって表す。
角目
縁網と網糸が平行な網目のことをいう。
菱目
縁網と網糸が平行でない網目のことをいう。
かえるまた結節網地
網目の網糸の交さ部ばかえるまた結節によって形成されている網地のことをいう。
無結節網地
網目の網位置の交さ部が結節でなく、網糸のストランドが加熱されつつ互に交さ若しくは組み合わさって編網されている網地のことをいう。
ラッセル網地
無結節網地の一種で、ラッセル編網機により編網されている網地のことをいう。
③構造、材料及び寸法
1.安全ネットは網地、縁網、仕束糸及び吊網等により構成するものとする。
2.網目は、角目又は菱目とし、網目の一辺の大きさは10cm以下とする。
3.網地の種類は、かえるまた結節網地、無結節網地又はラッセル網地とする。
4.安全ネットの四隅に吊網を取付けるものとする。但し、ネットの辺長が3mをこえるものにあっては、3m以内、かつ等間隔ごとに吊網を取付けるものとする。
5.吊網の長さは、2m以上とする。ただし、1筒の吊網が2本からなるものにあっては、それぞれの長さを1m以上とすることができる。
6.安全ネットの仕束寸法の推奨地は表1のとおりとする。
7.安全ネットの垂れは、ネットを8点支持で仕立寸法通りに張った状態において、表2の値とする。
8.網地、縁網、吊網及び仕立糸に使用する材料は、ナイロン、ポリエステル又はビニロン等の合成繊維とする。
④工作等
1.縁網及び吊網は、三つ打ロープ又は八つ打ロープとし、端末部分がほどけないよう熱処理加工又はかえりさつま加工を施すものとする。
2.縁網と網地との仕立は、縁網を周辺の各網目に貫通させ、相互がずれないよう仕立糸で結着しておくか、又はこれと同等以上の強度を有する方法によるものとする。
3.縁網と縁網との接続は、各線網のすべてのストランドを4回以上編み込むショートスプライスによるか、又はこれと同等以上の強度を有する方法によるものとする。
4.吊網と縁網との結着部は、十分な強度を有する構造とする。(※十分な強度…1000kgの引張力に対して結着部が容易にほどけない強さ)
5.かえるまた結節網地にあたっては、目締め加工を施すものとする。
⑤性能
1.安全ネットの網糸の新品時における引張強度は、表3の値以上とする。
2.安全ネットの縁網及び吊網の新品時における引張強度は、1,500kg以上とする。
3.安全ネットの落錘試験による性能は、表4の条件を満足するものとする。
⑥試験方法
1.試験室の標準状態
次の2及び3の試験を行う場合の試験室の状態は、JISZ8703(試験場所の標準状態)の第3類に規定する20°±20℃の温度及び65%±0.5%の湿度とする。ただし、試験室が上記の状態に保たれない場合は、試験時の温湿度を付記するものとする。
2.網糸の試験
安全ネットの網糸の引張強度試験は、次によるものとし、引張速度は15cm/min~30cm/minとする。
(1)網糸の試験片は、ネットに使用されている網地から切り取ること。
(2)無結節ネットの網糸の引張強度試験にあっては、網糸の両端を網糸の径の5倍以上のドラムに巻きつけて行うものとし、ドラムの中心間距離は20cmを標準すること。
(3)ラッセルネットの網糸の引張強度試験にあっては、図2に示す1本2節の状態で行うこと。
(4)かえるまた結節ネットの網糸の引張強度試験にあっては、網糸の撚りがほどけない状態で図2に示す結び目(ループ結節)を試験片の中心に設けて行うものとし、試験片の有効長さは20cmを基準とすること。
3.縁網及び吊網の試験
安全ネットの縁網及び吊網の引張強度試験は、試験片の両端をアイスプライス(さつま編み込みは4回以上)とし、そのアイ部に試験片の径の5倍以上のピンを通して行うものとする。試験片は、ネットに使用されているロープから切り取るものとし、その有効長さは径の30倍以上を標準とし、引張速度は15cm/min~30cm/minとする。
4.安全ネットの落錘による性能試験
安全ネットの落錘による性能試験の方法は、次によるものとする。
(1)供試ネットを四隅及び各辺の中間部で支持する8点支持の状態で落錘試験設備の吊具に取付、供試ネットの中心部に重錘を所定の高さから落下させること。
(2)上記(1)の落錘試験における重錘の落下高さは、供試トットの支持点より上方0.75Lの位置とすること。ただし、Lは供試ネットの短辺長(m)とする。
(3)落錘試験に用いる垂錘は、重量が90kgであって、かつ、形状が図3に示すような円筒形のもので、その軸心上の重心付近に加速度計を取り付けること。